ホテル単位の基本戦略を設定する

どのような方法で利益を生み出し企業を維持発展させていくかは非常に重要なテーマです。その方法は「戦略」という言葉で表現されます。
※ 戦略や戦術という「軍事用語」をビジネスに当てはめるのに否定的な見解もありますが、広く普及している言葉でまだ置き換わるものがないため、そのまま使用します。

企業としての大きな戦略

経営学の教科書と言える『競争の戦略』(マイケル・E・ポーター、ダイヤモンド社)によれば企業の基本戦略は「コストリーダーシップ」「差別化」「集中」の三つがあるとされます。

  • コストリーダーシップ
    • 同業他社に比べて低いコストで地位を確立する戦略。
    • コストが低いことで、同業他社と同じ料金で販売すれば高い利益率が得られ、同業他社より安価で販売すれば高いマーケットシェアが得られる。
  • 差別化
    • 際立った特徴を持つ商品やサービスを開発し、ブランドと顧客ロイヤリティを確立する戦略。
  • 集中
    • 特定のマーケットセグメントにターゲットを絞り込む戦略。

 

ホテルごとの戦略構築

上記の戦略が企業の戦略だとすると、実際にホテルの現場で働く人々に求められる戦略は、企業の戦略を支えホテル毎(あるいは部門毎)の利益を生み出す「下位の戦略」と言えるものです。
チェーンホテルとしての戦略と、単体ホテルの戦略と考えてみると関係性がわかりやすいかと思います。

原則として下位の戦略は上位の戦略と矛盾してはならず、上位の戦略を支えるものでなくてはなりません。戦略は階層を持っていると考える方が良いでしょう。

ここではそのホテル毎の戦略を考えてみましょう。

 

ホテルの産業特性とホテルの基本戦略

ホテルの産業としての特性は「売れる数に限りがあり、上限に達しやすい」点に集約されます。

利益を計算式で考えると以下の通りです。

利益 = 売り上げ(単価 × 数量)− 費用

しかしホテルでは売れる数(客室数、レストランのテーブル数、宴会場の会場数と時間)に限りがあります。そして売れる数の上限には需要が集中する日などにあっさりと到達してしまいます。

そうなると、利益を生み出すには単価を上げるか費用を落とすかの選択になります。

理論的には「費用を落とす」ことが戦略となり得るのですが、現実には単体ホテルや単体部門には「売上上昇」を求められることが多く、かつ抜本的なコスト優位を保つ為にはハウステンボスの「変なホテル」に代表されるような大きな構造改革や技術革新が必要となります。
※ だからこそ企業戦略の一つとしてコストリーダーシップが挙げられる
※ 業界標準程度のコスト削減は構造改革や技術革新・大きな投資なく実現可能

その為、一般的なホテルで戦略を考える場合には、まず「単価を取るか」「数量を取るか」を選択してもらうことを推奨しています。

この、「単価上昇」「数量獲得」を選択することを(ホテルの)基本戦略と言います

これ以上の数量獲得が難しい場合、単価を上げるしか売上を増加させる手段がありません。稼働率が100%に達する場合、GMが取ることができる戦略は単価上昇ということになります。
これが企業の戦略だと「稼働率が高い地域に新規開業」という選択肢もあり得ます。

単価上昇と数量獲得は、同時に実施することが非常に難しい。
なぜかといえば、相互に矛盾することが多い戦略だからです。

一番わかりやすいのが「安価な団体を受注するかどうか」でしょう。
まだ販売できる数に余裕がある=数量獲得戦略が基本 場合、安価な団体を受注する方が売上が増加します。
一方で販売できる数の上限に達している=単価上昇戦略が基本 場合、安価な団体を受注してしまうと、より高単価なお客様を断ることとなり、結果売上は減少してしまいます。

ですから、基本的に「単価上昇」と「数量獲得」の戦略は同時進行できないと考える方が良いのです。
※ 戦略実施の結果「単価と数量の両方が上昇した」ということはあり得る

これは宿泊部門にも宴会部門にもレストラン部門にも言えることです。

 

単価上昇と数量獲得を切り分ける目安

宿泊部門の場合、
年間の客室稼働率が80%を超えると「単価上昇」戦略をとることを推奨しています。

どうしても需要が高くならない日曜・月曜の存在がある為、平均の稼働率が80%程度でも満室になる日が多くなってくるからです。

リゾートホテルのように需要の波が大きい場合には、月単位の稼働率から判断して、基本戦略を切り替える方が良いでしょう。

また、稼働率80%はあくまでも「客室数の制限により販売できる数の上限に達している」状態で、「マーケットサイズ(市場規模)の問題から販売できる数の上限に達している」という状態もあり得ます。
この例は日曜日や、人気がない行楽地に建てたリゾートホテルなどが該当します。
この場合であっても数量獲得を狙うことも可能ではありますが、難易度は高いでしょう。

宴会部門では、稼働率の計算が一般化しておらず、かつ現在主流となりつつある稼働率計算も当方の知る限りでは宿泊同様の水準までには使いにくいことがわかっています。
可能であれば、需要が集中する曜日を特定し、その曜日だけでもどの会場にどの宴会種別を取ることができるか一度試算してみることをお薦めします。

販売数の上限という意識がない場合、土曜日には婚礼と季節宴会が集中し実施出来る会場がないにもかかわらず、予算時点で婚礼も季節宴会も件数を増やす(つまり数量獲得戦略をとる)選択をしている事例がみられます。

レストランの場合も同様で、販売数の上限に達する場合には単価上昇戦略をとる必要が出てきます。
しかし、レストランで使用数量の目安として扱われる「回転数」はテーブル単位ではなく席数単位が一般的であることと、そもそも回転数では「販売の上限に対してどの程度まで到達しているか」という共通理解が得にくいという問題があります。

(例:ランチの回転数が1.5だとして、現場感覚では上限と感じるが、GMなど他部門長からは上限かどうか判断しずらい)

そういう意味では、レストランも稼働率を計算した方が良いと思われますが、この分野はまだ共通認識が持てていない状況です。

 

 

まとめ

  • 戦略は「企業としての戦略」「ホテルとしての戦略」に分けて考える
  • ホテルとしての戦略は販売できる数の上限を意識する
    • 数量獲得戦略
    • 単価上昇戦略
  • 宿泊部門では戦略切り分けの目安として客室稼働率80%を推奨
  • 宴会部門・レストラン部門での目安はまだ未整備
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レベニュー・マネジメントのノウハウも変化していく

スマートフォンが登場したことでインターネットがより身近になったように、技術の進歩や環境の変化により様々なものが変化していきます。

それはレベニュー・マネジメント(RM)も同様です。
「需要予測を基に 販売を制限する事で 収益の拡大を目指す 体系的な手法」であるRMの基本的な考え方はそのままに、環境変化により「販売制限の方法」が変化しました。

具体的に変化したもののひとつが、「最低販売価格(ハードルレート:HR)」の変更方法です。
従来のHRの変更方法は特定のプランや商品を「開けたり・閉めたり」することで価格を変動させます。
この方法を亜欧堂は「オープン・クローズ型」と呼んでいます。
現在主流のHRの変更方法はプランや商品の料金そのものを変えることで価格変動させるもので、亜欧堂は「ベストレート型」と呼んでいます。

オープンクローズ型とベストレート型

どちらも「需要に合わせてHRを変動させる」ことができますので、RMの理論に則った方法です。
しかし、どちらにも欠点があります。

 

 

オープン・クローズ型価格変動の欠点

オープン・クローズ型価格変動(OC)の最大の欠点は、「連泊が取りにくくなること」です。
OC型の価格変動の概要は以下の通りです。

  • 需要が高いと予測される日には安価なプラン・商品を販売停止
  • 需要が低いと予測される日には安価なプラン・商品も販売する

「販売を停止する」日が出てくるのが欠点を理解するためのポイントです。
電話予約ならともかく現在主流のインターネット予約の方法では、「プラン違いの連泊」をすることが出来ません。

オープンクローズ型の欠点

図をサンプルにご覧いただくと、土日の連泊では理論的には34,000円が最低販売価格のはずですが、プラン違いの連泊が出来ないインターネット予約では40,000円が最低販売価格になってしまいます。
結果、特にOTAでは価格面で不利になりますので競合ホテルに顧客が流出する可能性が高くなります。

特に連泊は以下の特徴を持ち利益率が高くなるためにホテルとしては重要なお客様となります。

  • アメニティの消費率が低くなる(歯ブラシなどは同じものを使うお客様が多い)
  • チェックイン・チェックアウトの件数が減る
  • リネン類を取り替えずに済ませてくださる環境志向のお客様もいらっしゃる

 

ベストレート型価格変動の欠点

もちろんベストレート型価格変動(BR)にも欠点があります。
それは「低需要時に高い金額での支払い意向のあるお客様を逃す」可能性です。
世の中には「このくらいの金額なら払える」という金額が高めのお客様が、少数ながらいらっしゃいます。
そのお客様を逃してしまったり、逃さなかったとしても、もともとのお客様の予算感より安価に販売してしまったりというのがこの方法の欠点となります。

ベストレート型の欠点

BRであっても、マーケティング面などから早割などの商品を販売するのは有効な戦略です。この場合、需要が高いと予測される日や需要予測を高く修正する場合には、早割を販売停止にしなくても料金のランクを上げれば良いので問題はありません。

 

変化に合わせた方法に進化させ続ける必要がある

このように考えていくと、高需要時の対応として「早割をクローズする」というのは、古い方法であって連泊が取りにくくなってしまうので、現状ではあまり好ましい方法とは言えません。
変化に合わせず古い方法だけに留まってしまうと、より高い効果を得る機会を逃してしまうことになりそうです。

※ サイトコントローラーはどちらの方式にも対応出来ます。

※  一部システムやバージョンアップしていないシステムは設計思想がオープンクローズを前提にしているものがあります。また、両方に対応できても設定に注意が必要なものもあります。

 

変化を知るためには、人脈や情報収集が重要になるでしょう。
普段から情報交換や情報収集の習慣をつけておくことで、変化の兆しを知ることができるのではないでしょうか。

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ホテルとマーケティング

Marketing

「マーケティング」はホテル業界のみならず広く全ての業種や組織で活用されていて、その定義は下記のとおりです。


AMA (アメリカマーケティング協会)が2004年に改定した定義

Marketing is an organizational function and a set of processes for creating, communicating and delivering value to customers and for managing customer relationships in ways that benefit the organization and its stakeholders
マーケティングとは、組織とステークホルダー(関与者)両者にとって有益となるよう、顧客に向けて「価値」を創造・伝達・提供したり、顧客との関係性を構築したりするための、組織的な働きとその一連の過程である。

日本マーケティング協会が1990年に発表した定義

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

ちょっと難しいので、私がホテルの方に説明するには「自然にものが売れるための仕掛けづくり」だと簡単に説明してます。


世間一般でも「マーケティング=宣伝・販売促進活動」だと考えられているようですが、これはマーケティングの一部だけを捉えたもので、誤りだと言えます。


外資ファンド系ホテルチェーンを中心に、ホテル再生や増収の手段として、マーケティングが注目されています。ここでいうマーケティングは、上の定義に基づいた総合的なもので、主に「需要を増やす手段」として捉えられています。


一方で日本のホテルの場合多く見られるのは、マーケティングの機能や役割が複数の部門部署に分散してしまっているケースです。

例えば、商品の作成一つとっても、分散が見られます。
■ キャンペーンやメディア用露出強化の商品は「企画部門」作成する
■ 日常的に販売する商品は「宿泊予約」が作成する
■ 旅行代理店へ提供する商品は「営業」が決定権を持つ

分散そのものは、悪いことではないのですが、情報が偏っていたり、ホテルの基本戦略がきちんと伝達されていないと、有効性でないモノになったり、部門間で協力体制が取りにくくなったりする傾向があります。

となると、
効果的なマーケティングの活用には2つの方向性があることになります。
1.マーケティングの基礎をしっかりと把握した人が、それぞれの部門部署に分散している機能を総合的にコーディネートする
2.機能の分散を止めて一か所にまとめる

では、ホテルのマーケティングが最低限持つべき機能とは何でしょうか?
マーケティングには多岐にわたる手法があり方法論がありますが、私がお勧めするのは、
「ターゲットの設定」及び「マーケティングミックス」に基づく整理
です。

Marketing Flow

ターゲットの設定とは、そのホテルにとって獲得すべきお客様(ターゲット)を明確にすることで、主に予算作成の時期に「マーケットセグメント」をどのような割合とするか(マーケットミックス、ビジネスミックス、ゲストミックスなどホテルによって呼び方は様々)を決めることです。

マーケットミックスは、ホテル業特有の制約条件から、消費財販売といった業種に比べて重要度が高くなります。
ホテルは客室数が販売数量の上限として「制限」されてしまうため、需要が強いマーケットを持つホテル(私の基準では年間稼働率80%以上のホテル)ほど、満室になる状況の下で、どのお客様をどの割合取るのかというマーケットミックスが重要になるということです。
簡単に言うと、満室が予測される日に安い料金の団体客を取りたいですか?ということですね。


マーケティングミックスとは、4Pとも呼ばれている次の観点を指しています。
■ Product (商品)
■ Price (販売価格)
■ Place (販売経路)
■ Promotion (広告宣伝)

また、これらのうち商品、価格、経路は、
■ 初期の設定(商品開発、基本売価の設定、経路の開拓)
■ 日常的なコントロール(商品の販売可否、ダイナミック プライシングによる流動的な価格の調整、経路の開け閉めなど)
に分割して考える方が良いでしょう。

端的に言うと、後者の日常的なコントロールが「レベニュー マネジメント」の範囲ということになります。

広告宣伝に関しては、ここだけが部署として存在している場合、ホテル全体のプロモーションやイメージ戦略を専門にしていることが多いようです。
結果、日本の殆どのホテルでは消費財販売などの業種に比べ、それぞれの商品をプロモーションする機会が非常に少なくなっています。
(ここはかなり専門的な議論が必要な部分です)


いずれにせよ、ターゲット設定+マーケットミックスの観点から、ホテルのマーケティングを整理することで、戦略が整備され、劇的な増収を果たすことも不可能ではありません。

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データの活用を考える

レベニュー・マネジメントの導入のお手伝いをしていると、よく「もっとデータ分析をしっかりやりたい」との声を耳にします。では、データの活用とはいったいどういう状態をいうのでしょうか。

実はデータには、大きく2つの種類があります。

  •  戦略戦術を立てる為の素材となるデータ
  •  戦略戦術の状況が適切かどうかを判断するデータ

この種類を意識してデータを分析する必要があります。

また、この両方の種類に該当するデータもあります。
宿泊部門でいえば、RevPAR, ADR, OCC等がそれに当たります。この様なデータは、KPI (主要業績評価指標)として扱われることが多く、ホテルの種類や状況を問わず、等しく必要になります。

戦略戦術を立てる為の素材となるデータは、多くの種類を集められれば分析の幅が広がります。一方で、PMSで集計できる事を担保しなければ、データを集める効率が悪くなり、「分析の為の時間がかかりすぎる」という状態に陥りやすくなります。

 

戦略戦術の状況を確認する為のデータは、そのホテルが立てた戦略戦術により、必要となるものが変わります。例として、以下のものを挙げておきましょう。

  • レジャーマーケット(2P)を増やすことでADRを上げる → ADR, DOR
  • 連泊需要を増やす為に、AGTに連泊特典を提供する → AGT の LOS
  • 自社サイトの予約比率を上げる → 自社サイトの RN と Share

さて、データの活用に最も大切なことは「戦略戦術と結びついているか」です。この部分がしっかりと担保されれば、データが活用出来ないということはなくなります。

その為に一番大きな課題は、マーケットセグメントの設計です。
マーケットセグメントは、マーケティング的には「お客様を共通の傾向で分類したもの」であり、それぞれのセグメントに対して、適切なマーケティング活動(マーケティングミックス)を行うことで増収増益につながります。
そしてマーケティング的には、マーケットセグメントの分類基準に正解はありません。基準はその企業の自由なのです。

一方で実務的には、ホテル内でマーケットセグメントに対して共通認識を持つことが必要不可欠です。ホテルの中では、マーケットセグメントに基づく戦略構築が最優先となるべきだからです。

実例で挙げると、あるホテルチェーンのマーケットセグメントはWEB, AGTなどの「経路」型で、個人・団体が分かれていないものでした。そのチェーンの中のあるホテルのGMは、最優先の戦略として、「団体獲得」を挙げています。
これでは、戦略の優先度について意識が違いますし、何より報告書の数値に「個人・団体」の分類が見られない為、そのGMの説明を数値面から検証できなかったり、あるいは検証する為に手をかけて別に集計・分析する作業が必要になってしまうわけです。

 

データを活用する為のポイントは以下の通りとなります。

  • マーケットセグメントに基づく戦略が最優先の戦略として共通認識になっている
  • 戦略の実行状況を検証する為にデータが使われている
  • 必要となるデータは、PMSから取得できる事が担保されている
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国内ホテルのマーケティング構造を考える

国内ホテルにおいて、マーケティングの機能が不十分であるという議論を聞くことがありますので、その構造を整理してみました。ここでは、議論を単純化する為にブランドがあるチェーンホテルの宿泊部門に限定して考えています。

まず、マーケティングの機能について必要最小限のものを整理してみたいと思います。

  • Targeting / ターゲティング
    • 自社の強みを活かせたり、競合がいないマーケットセグメント(市場を消費者の特性によって細分化したもの)を選ぶ事
  • Positioning / ポジショニング
    • ターゲティングで選んだセグメントに対して、競合より有利な立場(ポジション)を保てるようにベネフィット(お客様にとって自社の何が得なのか)を宣言する事
  •  Marketing Mix / マーケティングミックス
    • ターゲティングで選ばれたセグメントに対して、望ましい反応を引き出すためにツールを組み合わせること。
    • マーケティングミックスには4Pと4Cが提唱されていますが、ここでは普及度の高い4Pを使用します。
      • Products / 製品
      • Price / 価格
      • Place / 流通経路
      • Promotion / 広告宣伝
  • Branding / ブランディング
    • お客様が何かを選ぼうとする時に、細かな情報よりも『ブランドのイメージ』から容易に選択できるように、情報を整理して届ける一連のプロセス

 

では、これらのマーケティングの機能がどの様な構造で運用されているのかを考えてみましょう。ホテルのマーケティング機能の構造を理解する鍵は、「大きな視点」と「小さな視点」を切り替える事です。

大きな視点とは、「企業が提供している商品が『ホテルそのもの』である」というものです。
小さな視点とは、「ホテルが提供している商品が『各種の宿泊プラン』である」というものです。
大きな視点では、商品を提供する主体は「企業」であって、オペレーター(運営会社)とは限定しないのがポイントです。
オーナーの視点で考えてみれば分かりやすく、オーナーにとって商品とは、ホテルという建物やそこに付随するブランド(≒オペレーターの選択)だったりします。

オーナーにとってのマーケティングは、概ね下記の用に整理できるのではないでしょうか。

  • Targeting: 大きな視点で「富裕層向け(ラグジュアリーホテル)」「出張者向け(ビジネスホテル)」等
  • Positioning: 主にハード面から設定される。立地やハードの内容など
  • Marketing Mix
    • Product: 主にハード面から設定される。客室+ブランドイメージと考えると分かりやすい
    • Price: 主にラックレート水準と考えると分かりやすい
    • Mix/Place: 一般的経路+ブランドが用意するもの
    • Mix/Promotion:主にブランドが用意する
  • Branding: ブランドとしてのオペレーターを選ぶ事とほぼ一致

つまりオーナーにとってのマーケティングとは、(細かなケースのずれはあるにしても)自社の資産=土地をホテルとして消費者に提供するにあたり、主に立地特性から Targeting & Positioning を行い、オペレーターを選ぶ事だと言えそうです。

 

次に小さな視点 =オペレーター から考えてみましょう。

  •  Targeting: 大きな視点で捉えられたものから細分化して設定する。
  • Positioning: ハード面、ブランド面から制約を受ける
  • Marketing Mix
    • Product: 客室+付加価値(パッケージ商品や宿泊プラン)
    • Price: ラックレートに制約を受けて設定される
    • Place: (AGTとの契約など)個別機能的に検討される
    • Mix/Promotion:ブランド面から制約を受ける
  • Branding: オペレーターブランドの価値として戦略的に検討される

この様に考えると、オーナーのマーケティングの成果物の中で、制限を受けながら検討する必要が出てきているのが分かります。
一度ホテルが建てられると、建築前に想定されたターゲットに合わせて客室などの施設が作られます。
これは大きな制約条件です。
極端に言えば、好立地にビジネスホテルのスペックでホテルを作ってしまえば、そこにラグジュアリーホテルの客層が見込まれるからといって、ラグジュアリーマーケットにターゲットを変更する事が出来ない、という事です。

ブランド=チェーン本部(HQ)とホテルプロパティ(PTY:それぞれのホテル)に分けて考えてみましょう。
Brandingの機能をHQが持っていますので、Marketing Mix はPTY側で検討できるとはいえ、ブランドの制約を受ける事になります。
ブランド価値を高める為のBrandingは、PTYにとっては「制約事項」として捉えられる事が多いものです。
Brandingの基本は、顧客に対して継続的に同じ価値を伝え続ける事だと言えますが、その為にはイメージの統一が必要です。それは客室のデザインから会員プログラムの特典内容、顧客に対しての文章の書き方など多岐に及びます。

つまり、我々が普段ホテルとして表現するプロパティレベルのオペレーターは、ハードとブランドの制約を受けた中で、非常に限定されたマーケティング活動を行う事になるのです。

更に、これまで大きな影響力を持っていた旅行代理店(AGT)についても整理してみましょう。

  • Targeting: AGTによる
  • Positioning: AGTによる
  • Marketing Mix
    • Product: 客室+付加価値(交通手段など。付加価値はAGTが設定する)
    • Price: ホテル側の提示+AGTの設定(パッケージ化による価格設定など)
    • Place: AGTによる
    • Mix/Promotion:AGTによる
  • Branding: AGTによる

AGTのマーケティング機能のうち、ホテル側が主導権を持てるのは「商品の一部」である客室部分と価格の一部(AGT側にとっては仕入れ原価に相当する)という事になります。

つまりAGTの比率が高いホテルにとって、ホテル側が行うべきマーケティングは、主に
□ Products: 建設時点でスペックが決まる客室
□ Price: 販売価格
の2つになってしまいます。
そしてそれは、PTYレベルでは Price だけ、という事なのです。
この様に整理すると、ホテルのマーケティングについて議論する時に、どのレベルについて議論しているかを明確にする必要がある事が分かります。
特に、全てのマーケティング活動を行っている一般企業との比較の際には要注意でしょう。

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朝食のヒント 2015/01/18現在

メディアなどで取り上げられる食のトレンドを、朝食メニュー開発のヒントとして。
朝食ビュッフェのトレンドが多品目+地元名産物となっているので、差別化につながるかもしれません。

 

メイソンジャーサラダ

『メイソンジャー』とは、アメリカで親しまれている密閉ガラス容器のことで、メイソンジャーの中にサラダを詰めたものが「メイソンジャーサラダ」。詰めるときに層状にするので、見た目がとてもきれいなところも人気の要因のようです。
2015/01/18

http://macaro-ni.jp/8749

モンティクリスト

「モンティクリスト」とは、フレンチトーストとクロックムッシュの中間のようなサンドイッチだそうです。
2015/01/18

http://cookpad.com/articles/3688

 

エッグスラット

エッグスラットとは、ハーブやスパイスなどで味付けをしたマッシュポテトを瓶に入れ、その上に生卵をのせて、湯せんするといういたってシンプルな料理です。
LAセレブの間で人気になっていると2014年5月6日放送の番組「世界の日本人妻は見た!」(TBS系)で紹介されました。
2015/01/06

http://matome.naver.jp/odai/2141076006138119301

 

ライスミルク

ライスミルクとはお米を原料としたミルクで牛乳、豆乳に続き、第三のミルクと言われています。月刊情報誌「日経トレンディ」が発表した2015年ヒット予測ランキングで4位にランクインしており、注目度が高くなっています。
2015/01/06

http://matome.naver.jp/odai/2142037731558444501

キヌア

キヌアとは南米の雑穀で栄養価が高くダイエット食としても注目されているそうです。
人気モデルのローラさんがブログで触れていたりします。
2015/01/06

http://mery.jp/69212

 

アサイーボウル

アサイーボールとは、ブラジル原産のヤシ科の植物であるアサイー(ブルーベリーのような果実で、ポリフェノールがブルーベリーの18倍、鉄分はレバーの3倍で食物繊維やカルシウムも豊富)をピューレにし、バナナなどのフルーツと一緒にスムージー状にして好みのフルーツとグラノーラをトッピングする食べ方のこと。アサイーをボウル(お椀)に盛り付けてあることからこの名前がついた模様です。
2015/01/06

http://matome.naver.jp/odai/2134381065124439501

 

エッグベネディクト

エッグベネディクトとはイングリッシュ・マフィンの半分にハムやベーコン、ポーチドエッグ、オランデーズソースを乗せたもので、1900年ごろから見られる朝食メニューです。
目玉焼きやスクランブルエッグと比べ手間がかかる料理ですので、以前は高価格帯のホテルで単品メニューとして見られる程度でしたが、2014年ごろから認知度が高まっています。

2014-07-30 09.07.37

 

http://www.huffingtonpost.jp/junko-fukuda/story_b_5341202.html

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レベニュー・マネジメントの2つの流儀

実はRMには目的の捉え方により2つの流儀があります。

  • 売上(または利益)の拡大を目的とする
  • 予算達成を目的とする

売上の拡大を目的とする流儀では、日々の活動を重視します。
日々蓄積されるデータから、将来の需要を予測し販売の方法を調整することで、売上の拡大を図ります。
ですからこの流儀では、RMの成果をRevPARが拡大したかどうかで判断します。

この流儀でもより高度な判断では、RPI・RGIといった競合との比較指標を基にRMの成果の良否を判断します。
競合よりうまく販売で切れていれば、RPI・RGIともに数値が改善するからです。RevPARの伸びだけでは「単に市場全体が好調であった」かどうか、つまり「ラッキー」だったかどうかはわからないからです。

一方予算達成を目的とする流儀では、売上の拡大は当然のこと(売上拡大は予算として織り込み済みとなる)として、「予算が達成できたか」をRMの成果の判断基準とします。
いくら前年よりRevPARが伸びていたとしても、予算が達成できていなければ良い評価は与えられません。
もちろん、予算が「絵に描いた餅」で実現不可能なほど高いものであればこの基準は成立しませんので、「妥当な予算を作成すること」もRMの業務に含まれます。

 

流儀により異なる業務範囲と判断指標

つまり、それぞれの流儀により「RMの業務」として考えられているものと、成果の判断指標が異なってくるのです。
概要をザックリまとめると、下表のとおりとなります。

RM 2way task

予算達成を目標とするRMの方が、当然ながら必要となる業務も指標も多くなります。

 

予算達成を目標とすべき

そもそも、RMを導入する目的はなんでしょうか。
いうまでもなく「より売上(または利益)を拡大する方法」としてRMを導入する、そう考える方がほとんどでしょう。
であれば、「売上の拡大を目的とするRM」でも十分な気もします。

しかし企業として売上の拡大を目指す以上、そこには「目標値」が必要になります。
「どのくらい増えるかわかりませんが売上は伸びます!」と言われても、RM導入に関わるコスト(手間やお金)を出す部門長やGM・オーナーはそう多くはないでしょう。

「RMの効果を盛り込んだ目標値=予算」の作成を求めるのは当然ではないでしょうか。

そう考えると、RMの業務範囲に「妥当な予算の作成」及び「予算達成に必要となるアクションの検討」が必要となるのです。

 

予算達成を目標とするRMには、「妥当な予算の作成」や「予算達成に関するアクションの検討及び進捗管理」に関するノウハウや仕組みがあるのです。

RM導入支援を外部に求める場合は是非、「予算達成を支援する仕組作り」まで依頼すると良いでしょう。

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レートコントロールのタイプを考える

宿泊部門のレベニュー・マネジメント(以下RMS RM)において、増収効果を高めるために「最低販売価格(Hurdle Rate:以下HR)」をどのように管理するかは重要なテーマとなります。

レートコントロールは幾つかのパターンに分類され、その観点は大きく2つです。

  • 販売開始時点の価格をどのように決めるか
  • HRを変動させる仕組みをどのように構築するか

販売開始時点の価格決定方法が大きく2パターン、
HRを変動させる仕組みが大きく2パターン、
これらの組み合わせで4パターンの料金コントロールの体系が見られます。

販売開始時点の価格をどのように決めるか

販売開始時点の価格を幾らにするか、そしてその後の予約受注に伴いどのようにコントロールするか、その方法も大きく2つに分類することができます。

  • オンハンドに基づき販売価格を決める:オンハンド型価格設定(OH Pricing)
  • 予測に基づき販売価格を決める:フォーキャスト型価格設定(Forecast Pricing)

OPvsFPオンハンド型価格設定は、その名の通りオンハンドに合わせて販売価格を吊り上げていきます。
そのため、販売開始時点の価格は低く抑えておくのが基本です。

フォーキャスト型価格設定は、「この値段で埋めきれる」という予測に合わせて販売開始時点の価格を決め、予測が外れない限りはその価格を変えないというコントロールが基本となります。
現実にはこの2つを複合して運用しているホテル・旅館が多いようなのですが、どちらの色が濃く出ているかによって大まかに分類することができるでしょう。

どちらも増収効果を得ることはできるのですが、物事には何にしても長所と短所があるもの。この2つにもそれぞれ長所と短所があります。

  • オンハンド型価格設定
    • 長所:
      • オンハンドに合わせて価格を決めるので「価格を高くしすぎて予約が伸びなかった」というミスが起きにくい
    • 短所:
      • 安く販売する時期があるので全体的なADRが低い水準になりやすい
      • 価格変更の頻度が高くなり手動で価格変更を行う場合は生産性が低くなる
  • フォーキャスト型価格設定
    • 長所:
      • 全体的なADRが高い水準になりやすい
      • 価格変更の頻度が低くなるため生産性は高くなりやすい
    • 短所:
      • フォーキャストを間違えれば増収しにくい。
        → ハイリスクハイリターンとも言える。上級者向け。

 

どちらがお薦めかといえば、「ブッキングペースを毎日確認する」ことを前提に「フォーキャスト型価格設定」を行う方が良いのです。
フォーキャスト型価格設定は予測を間違えると予約が極端に伸びなかったり伸びすぎたりという短所があるのですが、ブッキングペースを毎日確認することで、そのミスの発生を予防することができます。

一旦フォーキャスト型価格設定が機能し始めれば、全体的にADRは伸びやすくかつ価格変更の手間も減るという効果が得られますし、前年データをもとに次年度の販売開始時点の価格を見直すことも容易になるのです。

※ 上記サンプルでは約16%もフォーキャスト型の収入が大きくなっています。

 

HRを変動させる仕組みをどのように構築するか

オンハンド型価格設定を行うにしても、フォーキャスト型価格設定を行うにしても、実際のブッキングペースに合わせてどのようにHRを変動させるか、その仕組みを構築する必要があります。

HRを変動させる仕組みもまた、大きく2つに分類されます。

  • 料金を開け閉めすることでHRが変動する:レートバケット型の変動
  • 料金そのものを変動させる:ベストレート型の変動

BRvsRB
レートバケット型はRMの黎明期に主流であったスタイルです。
簡単に言うと幾つかの宿泊条件の異なるプランや料金を用意し、低需要時には割引系料金もオープンし、高需要時には割引系料金をクローズすることで需要に合わせた価格調整を行うというものです。

一方、現在主流のレートコントロールはベストレート型で、需要に合わせて料金そのものを変動させます。ダイナミックプライシングやフローティングレートと呼ばれることもあります。

やはりこの2つの方法にも長所と短所があります。

  • レートバケット型の変動
    • 長所:
      • 低需要時にも高単価商品の販売可能性が残っている
    • 短所:
      • 連泊が取りにくくなる
      • 高需要時に商品選択の幅が狭くなる
  • ベストレート型価格設定
    • 長所:
      • 連泊が取りやすい
      • 高需要時でも商品選択の幅が広いまま
    • 短所:
      • 低需要時に高単価商品の販売が行われにくくなる

これもどちらがお薦めかといえば、ベストレート型の変動です。
一番大きな理由としては「レートバケット型の変動では連泊が取りにくくなる」ことのデメリットが大きいからです。
WEB予約の今主流の仕様では、プラン違いの連泊は予約の候補として表示されません。結果連泊が取りにくくなります。しかし連泊は売上の安定化や低コストといったメリットが大きく、優先度が高いのです。

 

 

これらの特性を理解した上で、自ホテルの現状に合うレートコントロールのスタイルを決めていただければ幸いです。

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RMのセオリー / 直前の値下げは失敗と考える

レベニュー・マネジメント(RM)を実践するにあたり、毎日の業務の中で重要度が高いのが「需要予測に合わせて客室をいくらで販売するべきか?という料金設定です。

需要が高いと予測できれば料金も高く販売する、需要が低ければ料金は安い方がいい・・・というのは誰しも分かりやすいことだと思います。しかし実際に予約が入りだすと、思っていたより予約がのびないので料金を下げてなんとかしようとする、というケースに直面している方も多いのではないでしょうか。

RMのセオリーでは、「直前の値下げは失敗」と考えます。

直前の値下げが失敗である理由

なぜ直前の値下げは失敗か、その理由は、直前で値下げするくらいなら「最初からもっと安く販売すればもっと予約が多く受注できていたはず」と考えるからです。

お客様がそのホテルをなぜ選ぶのかと言えば、それぞれのお客様によって様々な選択理由があるのでしょうが、それでも共通している傾向として「価格」の影響を抜きに考える事は出来ません。
であれば、高価格で販売していた時期にもっと安価な価格で販売すれば予約は増えるのです。

もう一つの理由は、お客様の傾向によって予約する時期が異なるというものです。

簡単言えば、価格に対して敏感なお客様は早い時期に予約する傾向があり、価格に対して許容度が高いお客様は直前に予約する傾向がある、というものです。

表にまとめると下記の通りとなります。

お客様の種類 価格に対して 日程に対して
早く予約するお客様 敏感 受容的
直前に予約するお客様 受容的 敏感

もちろん、上記とは異なる特性を持っているお客様もいらっしゃいますが、概ね上記の傾向と考えてよいでしょう。

価格に対して敏感なお客様は、最近では航空券にとどまらず様々なものが「早割」でお得に購入できますので、予約の時期が早い傾向にあります。

価格に対して受容度が高い、つまり懐に余裕のあるお客様は日程に敏感です。直前にスケジュールが決まったりするので、多少の価格は気にしない傾向です。
ただし直前に予約するお客様も、同じ部屋なら安い価格でも構わない訳です。
つまり、直前に安く販売する事で高単価でも構わなかったお客様を低単価で受注する事になるのです。

この事を検証するには、同じ需要が想定される日に「最初から安く販売する」方法と「直前で値下げする」方法を取った結果を比べてみるといいでしょう。

では、直前で値下げする失敗をなくすにはどうしたら良いのでしょうか。

そのポイントは以下の通りです。

  • 団体のオンハンドがある場合、その団体の予約区分からWashの可能性を予測する
  • 価格の初期設定の方法を見直す

 

団体のオンハンドがある場合

直前の値下げにつながる最も多い原因は、団体があってオンハンドが高い為値上げをしたが、その後団体がキャンセルとなってしまい慌てて値下げをする、というものです。

団体が解けて値下げしてしまうイメージ

上のグラフは、団体が解けて値下げしてしまうケースのイメージです。
グラフ中の緑の線が全体のブッキングペース、ピンクの線が普段のブッキングペースイメージ、青の面グラフが内訳としての団体オンハンド室数、破線が最低販売価格(ハードルレート)の推移です。

RMは、「需要予測を基に 販売を制限する事で 収益の拡大を目指す 体系的な手法」ですから、予測ではなく現状である「オンハンド」を基に判断するのはお薦めではありません。
団体のオンハンドがある場合には、仮予約なのか(仮予約なら受注の見通しが高いのか低いのか)、催行は確定しているが利用室数は確定していないのか、ネームリストを入手する等して利用室数まで確定しているのかという、
団体予約区分を基にWashを予測してから販売を制限するべきなのです。

※ 関連:レベニュー・マネジメント視点の団体管理

 

価格の初期設定方法を見直す

団体が入っていないにも関わらず直前で値下げをしている場合には、販売価格の初期設定(つまり販売開始時点での価格設定)が高すぎるという事が考えられます。

これを予防するには、以下のステップで販売価格の初期設定を決めていただく方が良いでしょう。

  1. 同じ傾向を示す日(TOD: Type Of Day)をパターン化します。
  2. TOD毎にそれぞれのマーケットセグメントに対して、室数、ADR、DORを調べます。
  3. 販売上の反省をふまえて、上記のセグメント別室数・ADR、DORを修正します。
  4. 各マーケットセグメントのDORから、1名利用と2名利用の割合を推定します。
  5. 10室のシミュレーションでADRにあう1名利用料金と2名利用料金を設定します。

RMでは共通の傾向を示すTODを重視します。

TODを最も簡単に捉えるには、月別曜日別に考えていただくのが一番です。
もちろん曜日別だけが共通の傾向ではなく、水曜日と木曜日を同じTODとして捉える事もあれば、同じ土曜日でも「野球の試合がある土曜日」と「そうでない土曜日」を異なるTODとして捉える事もあります。

とはいえ、月別曜日別に捉えるのは初心者向けであり8割方正解と捉えてよいでしょう。

TOD毎に各マーケットセグメントの室数、ADR、DORを分析したら、ブッキングカーブなどを参照して販売上の問題点や失敗を踏まえて「こうしたらより収益が拡大する」方向で修正をします。
例えば、安価な団体を受注しすぎて比較的高単価な個人を断っていたのだとすれば、団体の受注を押さえて個人の受注を増やした方が収益は拡大します。
亜欧堂はこの作業を「販売の設計図」作りと呼んでいます。

修正が終われば、DORを基に1名利用と2名利用の割合を推定します。
方法は簡単で、1室あたりの利用人数で春DORは、小数点以下の数値が2名利用の割合なのです。
例えば DOR 1.3 の場合は、3割が2名利用だと考えてほぼ間違いありません。
この方式が使えないのは、旅館やリゾートホテル等3名以上利用の割合が多い施設です。

このタイプの施設は、利用人数別の利用割合を算出できるかどうか、宿泊システムをご確認ください。宿泊システムからデータがでない場合は、TLXからのデータで分析可能です。(ただし宿泊者全体のデータでないなど完全なデータではないことにご留意ください)

最後に10室のシミュレーションをします。

DOR1.3の場合は7室が1名利用 3室が2名利用と設定し、これまで考えていた販売価格を人数毎の部屋に設定します。
そうすると販売価格の平均値がADRとなりますので、販売の設計図で考えたADRと比較します。
販売の設計図で考えたADRと一致していない場合は、これまで考えていた販売価格では目指しているADRには習いないという事になります。
その場合は販売価格を変更してシミュレーションを繰り返し、目指しているADRに近づけていくのです。

なお、オンハンドにあわせて販売価格を吊り上げていく「オンハンドプライシング」を実施しているホテルは、上記のシミュレーションから若干低い価格を初期設定にすると良いでしょう。

※ 10室のシミュレーションツールはこちら

 

今日のまとめ

RMのセオリーでは「直前の値下げは失敗と考える」のですが、失敗を少しでも取り戻す為に止むを得ず直前の値下げをする事は禁止でもありません。
反省を基にこの失敗の数を減らす事が出来れば、必ず増収増益に繋がります。

RMは「継続改善」のプロセスなのですから。

 

  • 直前の値下げは失敗である
  • 団体が入っている日に販売価格を上げたくなったら、団体予約区分を確認する
  • 10室のシミュレーションを活用して販売価格の初期設定を見直す
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宿泊の電話予約をどう販売するべきか

電話予約

レベニュー・マネジメントのトレーニングの中で、競合ホテルの電話予約受注方法を確認することがあります。そうすると、今の電話予約の販売方法には大きく3つのタイプがあることが分かります。
電話予約料金(TEL料金)、正規料金、WEB料金に分けて上記の3つのタイプを整理すると、以下の通りとなるようです。

  1. 電話予約は正規料金で販売 正規料金=TEL料金>WEB料金
  2. 電話予約は専用料金で販売 正規料金>TEL料金>WEB料金
  3. 電話予約はWEB料金で販売 正規料金>TEL料金=WEB料金

※ ここでいう電話予約の料金は、企業契約や会員料金などではなく誰でも予約できる一般料金です。

さて、電話予約をどう販売する方が良いかと言えば、圧倒的に

「電話予約はWEB料金で販売 正規料金>TEL料金=WEB料金」

をお薦めします。
お薦めの理由を説明する前に1.2.の方法の問題点を挙げてみましょう。

電話は正規料金で販売するのが間違いの理由

レベニュー・マネジメント(RM)は「需要予測を基に 販売を制限することで 収益の拡大を目指す 体系的な手法」と説明しています。需要が高ければ販売を制限し、需要が低ければ制限を緩めるのが基本で、制限には料金の上げ下げが含まれます。

この需要は、主にお客様の種類毎に考えることになります。
ビジネス目的のお客様は平日の利用が中心ですし、レジャー目的のお客様は週末や夏休みなど学校が休みの時期の利用が中心となります。この様にお客様の種類ごとに需要のピークは異なります。

一方で、予約経路と呼ばれる「どうやって予約するか」という方法には、主に 直接予約(電話や来館)、WEB予約、旅行代理店からの予約の3つがありますが、経路ごとに需要のピークは(それほど大きな)違いはありません。
リゾートホテルで考えてみるとよくわかるのですが、夏休みには直接予約もWEB予約も旅行代理店からの予約も増えるのです。

需要が同じなら料金が同じになるのがRMですから、電話予約を正規料金で販売するのはRMの観点からは間違いとなります。
電話予約を正規料金で販売すると、需要が低い時期に正規料金で販売するとお客様を逃がすことになり、結果稼働率をのばすことが出来なくなる、となるデメリットが大きいです。

この販売方法はマーケティングや顧客満足の面からも問題があります。
以前は「電話予約してくる人はWEBを見ていないから、高く販売しても大丈夫」という考えの方もいらっしゃったようですが、今やスマートフォンの時代、WEBを見ながら電話予約をしてくる方は少なくありません。

そんなお客様に正規料金を伝えるとどうなるか・・・
予約が取れないことはもちろんですが、電話予約を正規料金で販売することで「お客様に不誠実なホテル」という口コミが広がるリスクもあるのです。実際にTwitterやFacebook、トリップアドバイザーなどにその手の口コミが見られます。気になる方は「ホテル 電話 高い」で検索してみてください。

 

電話専用料金での販売をお薦めしない理由

RMの考え方からWEBも電話予約も同じ需要として販売するが、電話予約には手間がかかるから専用料金で販売しようという考え方は、あながち間違いではありません。
実際に沖縄のかりゆしLCHでは「電話予約は1泊あたり220円の手数料が必要」と公式サイトに明記(2014年9月19日時点で確認)しています

それでもお薦めしない理由があるのです。

電話予約を専用料金で販売すると、コントローラーは電話予約とWEB用の料金の両方を作成し、指示する必要があります。
「電話予約はWEBより200円UP」という簡単な物であればまだ良いのですが、電話予約は5段階の料金、WEB予約は10段階の料金・・・となると管理の難易度・手間は跳ね上がります。

一番の手間は予約担当者に掛かります。
お客様がWEBを見て予約をしてくることが多い以上、料金が違えばその理由を説明しない訳にはいきません。その説明をする間に、WEBと同じ料金で予約を受け付けてしまう方が早いと思います。

しかも、「それはWEBの料金だからWEBから予約してください」と断ることはリスクも伴います。
自社サイトから予約してくれれば良いのですが、楽天トラベルなどOTA経由の予約になれば手数料が必要になります。
それでも自ホテルに予約してくれればまだ良くて、OTAで別のホテルを見ているうちに、「こっちでいいや!」と別のホテルに予約されてしまうかもしれません。

電話予約をWEBに誘導するリスク

  • 手数料が必要になるかもしれない
  • 競合ホテルに予約が逃げるかもしれない

この様に考えると、電話予約を専用料金で販売するのはお薦めできなくなるのです。

 

電話予約をWEB料金で販売する効果

まず、考えられるデメリットから。

  • 電話予約を高く販売しなくなる分、ホテル全体のADRは微減する可能性がある

この程度でしかありません。
しかもADRの微減は、これまでの経験上無視できるほど小さな物でしかありません。

電話予約をWEB料金で販売することのメリットには以下の物があります。

  • 電話予約の受注確率の向上
  • 電話予約の顧客満足度改善(悪い印象を無くすことが出来る)
  • スタッフのストレス軽減

特にスタッフのストレス軽減の効果は大きいです。
電話予約とWEBの料金が違うことでクレームが起きたり、WEBを見ていることが分かってそのWEBを探して回答する手間が大きかったり、想像以上にスタッフは電話予約に対してストレスを抱えています。

電話予約をWEB料金で販売するのに「どうやってスタッフにWEB料金を知らせるか」という方法で苦労してる方もいらっしゃるようです。
解決策は簡単で、「自社サイトを見ながら電話予約の可否や料金を回答する」ことでよいでしょう。予約を受ける可能性があるPCに、自社サイトの予約画面を常時表示しておけば良いのです。
※ 電話予約でお客様に最初に回答するプランを決めておくこと

この方法のメリットは以下の通りです。

  • 残室数≠販売可能客室数であるが、残室画面を見せるよりコントロールが容易になる
    (WEBに在庫が出ている限り販売しなさい、という指示はスタッフに分かりやすい)
  • PMSの残室画面に指示を出すより(どうせ設定する)TLLを修正する方が作業が容易
  • WEBを見ているお客様とのやり取りが円滑になる

 

 

この機会にぜひ、電話予約の販売方法を見直してみてください。
電話予約をWEB料金にすることでの増収は正直ほとんどありませんが、それでも全体的にプラスの効果が多いのですから。

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