2016年02月時点で適正料金検討の視点を再整理

このところ、民泊及び予約困難となっている状況により各種メディアがホテル業界への注目を高めており、下記のようにホテル業界の料金設定に問題を感じる旨の報道頻度が上がってきています。

簡単に言うと「ホテル業界のこのところの価格設定は行き過ぎた値上げではないか」という疑問が消費者に広まっているということです。
このままでは、ホテル業界そのものの信頼が損なわれるのではないかと懸念しています。

 

そもそも、宿泊料金の「適正価格」については下記の視点での検討が必要でしょう。

  1. 顧客の支払い意向に基づく視点(需要に基づく価格設定もここに属すと考えられる)
  2. 利益創出の視点(損益分岐点を下回る料金設定を避けるという視点)
  3. ポジショニングによる視点(競合他社と比較した競争戦略上の視点)

 

これまでホテル業界は、宿泊需要の低迷を受け3.のポジショニングよる視点を中心としたプライシング(価格設定)を行ってきたと言えます。しかし現在では、主にインバウンド需要の増加を受け、1.の顧客の支払い意向を基にしたプライシングを、インバウンドマーケットに合わせて行っている状態だといえるでしょう。

ただし、マーケット別の価格戦略を取れているホテルが極端に少なく、マーケットを一括して価格を操作するために、国内マーケットも海外マーケットも同じ料金を提供している影響で、国内マーケットに属するお客様の支払い意向との断絶が生じ、料金に問題を感じる国内世論が出来上がってきていると考えられます。

ホテル業界側からは、お客様との意識の差を埋めるためにも、以下の視点で問題提起するなどの取り組みが必要でしょう。

  • これまでの料金が安すぎたのではないか
    • 海外主要都市との料金比較による視点(ニューヨークやロンドンとの比較論)
    • ホテル業の平均賃金による視点(ホテル業の平均年収は一般の平均年収を下回る)
    • ホテル業の経常利益率による視点
  • 国策に寄与しているのではないか
    • 人口減少社会化ではインバウンド(外需)を取り込まないとGDPが維持できない
    • 賃上げを行うホテルもでてきており所得向上に貢献できる(安倍政権による財界への3年連続の賃上げ要請あり)

価格上昇の是非はともかくとして、マーケット毎の料金戦略でも考慮すべき点が多々あります。
チャネル各社が契約上求めるレートパリティ(料金の公平性)がある以上、チャネルごとに料金格差をつけることはできません。また、仮に国内OTAと海外OTAで料金を分けて提供してきたとしても、国内OTAで海外のお客様が予約し、海外OTAで国内のお客様が予約をするケースが増えてきており、これでは国内・海外マーケット毎の料金戦略は取りようがありません。

現在のホテル業界の料金戦略に批判的な世論が形成されつつある背景には、下記の問題点があると考えられます。

  • クローズドマーケットの戦略欠如
  • レートフェンスの欠如
  • 商品構造の問題

 

現在の東京の宿泊料金は海外主要都市のそれと比べて高価というわけでもありません。
例えば2016年2月27日(土曜日)の2名利用時の最多価格帯をエクスペディア上で調べると下記の通りとなりました。

 

世界主要都市料金サンプル

※ 3スタークラスのホテルに絞り、2015年2月14日時点で検索

 

一方で海外主要都市では、企業契約料金を中心とした「クローズドマーケット」への料金戦略が取られています。
日本ではオープンマーケットに対する価格変動が普及した際にクローズドマーケットは固定料金のままであったため、本来安価であるべきクローズドマーケットがオープンマーケットより高価になるなどの不整合が生じ、企業契約の比率が大きく低下し、現在では重要視されていない状況にあります。
※ 一般消費者が購入出来るオープンマーケットに対し、契約などをもとに限定された層が購入出来るマーケットをクローズドマーケットという

しかし現在のマーケット状況下では、企業契約や会員料金などのクローズドマーケットに対する戦略を再構築し、「マーケット毎の顧客の支払い意向」に基づくプライシングを行う必要が強まっていると言えるでしょう。

 

レートフェンスとは、価格を引き下げて需要を喚起するプライシングを行う際に、従来価格の商品価値を棄損しないように、制限を設けるプライシング手法を言います。
代表例が航空券で、早割商品は安い代わりにキャンセル規定が厳しくかつ予約時期や変更に制限があるため、スケジュールが流動的なビジネス層には手が出しにくくなっています。このような「安価な商品には何らかの制限を設けること」がレートフェンスです。
ファッション業界でも主要ブランドのブランド価値を棄損しないためにセカンドラインを出すなどの手法が取られますが、これもある種のレートフェンスです。

これまで日本のホテル業界はレートフェンスを設定せずに低需要下の料金対策を行ってきたため、自らブランド価値を棄損し、お客様に「ホテルの料金はこの程度」という認識を与えてしまったと言えそうです。
レートフェンスを設定できていれば、高需要下ではレートフェンスのある商品を販売しないことで、ブランド価値を棄損せずに平均販売価格を引上げやすくなると考えられています。

 

商品構造の問題は、これまで「宿泊日直前まで残る部屋タイプ」はスイートルームなど高額な部屋タイプであるとお客様に理解していただきやすかったのに対し、スイートルームを持たない宿泊特化型ホテルが直前で宿泊料金を引き上げる方法をとる場合に商品性の差がないことであると言えます。
確かに「どうしてもその日に泊まる必要があるお客様」は宿泊料金を問わない傾向がありますが、一般的なお客様が購入する商品と同じものを高価に販売しては納得感が得られにくいと言えます。このようなプライシングを取りたい場合には、「(スイートルームなど)消費者に分かりやすい高単価な部屋」を作る必要があるように思います。

まとめ

  • 適正料金の設定は以下の3つの視点で考えるべき
    • 顧客の視点
    • 損益分岐点の視点
    • 競争戦略上の視点
  • これまでの料金への問題提起をするべきではないか
  • 戦略の稚拙さを反省するべき
    • クローズドマーケット
    • 客室構成
    • レートフェンス
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